高校は教育活動を学習指導要領に基づいて実施することが求められている。したがって、高校と地域の協働を進めようとするなら、当然、学習指導要領を深く理解して臨む必要がある。
ご存知のとおり、このほど学習指導要領が改訂され、2022(令和4)年度の入学生より新教育課程に移行する。それは、高校と地域の協働も、旧課程から新課程へのアップデートが必要であることを意味している。
そこで、新課程や「総合的な探究の時間」(総探)とは何なのか、旧課程や「総合的な学習の時間」(総学)と対比してみることとしたい。
総学とは何か、新学習指導要領解説・総探編には、「課題を設定し、解決していくことで、自己の生き方を考えていく」とある。それは例えば、「少子高齢化」等の地域課題を大人が選んで生徒に与え、解決策を考えさせる形になる。
その際、関心分野がかなり異なる者どうしが同じグループにされ、最大公約数的なテーマになる傾向が強い。そのため、どうしても「やらされ学習」に陥り、自走性は低迷したまま。授業時間だけの浅い活動に終わる。結果、受験科目の授業を圧迫する形になる。また、地域探究と進路探究が重ならないため、二重負担になるとともに、効果も薄い。働き方改革とも逆行する。
それに対して、総探とは「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していく」とある。それは要するに「マイプロジェクト」にとりくむ、ということだ。
そこを理解できていれば、活動単位は自然に個人単位になるし、学びの自走性も高まる。「マイテーマ」ゆえ、とりくむ場所や時間は「学校の授業時間」に閉じることはなく「いつでも、どこでも」になる。
テーマに恋し、「知りたい・学びたい・実現したい」という思いを持ち続けていることから、どの授業でも、地域でも、日々のニュースでも、関連のある情報が磁石に吸い寄せられるように集まってくる。そして、生徒がこれらをつなげることで個に応じた「教科横断的な学び」が実現する。
こうした軸があれば、少なくとも、教科の学習が苦役になることはない。また、進路とも不可分なので、総探の時間は自動的に進路学習の時間になり、「2年の総探で残した実績をふまえて、3年の総探で進路学習へと深める」という展開が可能になる。
結果、先生方の負担を軽減しつつ、進路実績を上げていくことが可能になる。実際、この点を理解して実施している高校は、今年度の3年生でも「向かうところ敵無し」「難関校も狙って合格できる」域の実績を収めている。
となれば、教育効果を収めつつ、働き方改革も実現できる。何より、こうした高校では、先生方は笑顔で「教師は本当に楽しい」と語る。
現課程と新課程の差は、これほどまでに大きく、コペルニクス的転回とさえ言うことができる。重要な視点は「生徒の自走性」だ。こうした変革に対しては、もはや「是か否か」「するかしないか」ではなく、「実行して当然」「そのためにどうするか」という態度で臨むことが必要といえる。
以上が、高校と地域の協働を進める上で、ぜひ肝に銘じていただきたい点である。