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この機会にオンライン化してほしいこと

 新型コロナウィルスの感染拡大を背景に、テレワークやオンライン学習等、情報通信環境をフルに活用しようという気運が高まっているが、これについては私も思うところが多い。

 

① 講演について

 お伝えする世界や内容に関心をもっていただけること自体は非常に有難いのだが、講演という形態は多くの場合、ストレスが高く、かつ虚しい。理由は次のとおりだ。

 開催に際しての前提が「参加者の基礎知識は概ねゼロ」であるため、講師は「知識の伝達」から始めないといけないし、訪問頻度や講演時間に関する制約から、それ(≒ 一方的な講義)だけで終わらざるをえない。加えて、参加者の学習意欲や理解力はマチマチ。となれば、スライドの取捨選択には神経を消耗せざるをえない。

 時折、耐えがたく虚しさを覚えるのは「長旅の後」に「ネット経由で十分に伝達できる内容」を「自分の口」で「一方的」に語っている時間だ。そう感じるのは、それが最近の講演で必ず言及しているとともに、同じ時間内にぜひ実現したいと願っている「対話」や「個別最適化」の対極に位置し、自分自身に「言行不一致」が突きつけられるからだ。

 旅そのものは全く苦にならない。とはいえ、気力や体力は有限であり、何より「時間は貴重な資源」であるとの認識から「ネットで済む講演」だけのために出かけるのは避けたい。そのため、今後は(リアルな講演に依らず)書籍やネット経由で種々の情報をお届けできるよう、作業を急ぐ所存である。この点もふまえ、主催者の方には今後「ネットで代替することは本当に不可能なのか?」につき、さらに厳しく精査をお願いしたい。

 

② 運営指導委員会について

 文部科学省事業に係る運営指導委員を、全国各地の教育委員会や高校から数多く拝命している。承った限りは、ご依頼元の高校や生徒たちのため、最大限に貢献していきたいと思っている。そして「そのためなら会議時間外のご相談はむしろ大歓迎」というのが私のスタンスであり、実際、そうなるように努めている。

 そのような立場から非常に残念なのは、訪問先の会議で「延々と説明を受け」た後、複数の委員が出席している関係から「各委員の助言時間が5~10分程度」という時間配分がなされるだ。たしかに、中には委員どうしで議論を深めることができ、それゆえリアルに集まる意義が認められる会合もある。しかし残念ながら、大半は「各委員 vs 関係教職員」で済むレベルだ。

 ぜひ一度「少なからぬ国費が投入されている事業に対する専門家のコメント」が「1人5~10分」でよいのか、TAX PAY の視点から精査をお願いしたい。そして、少なくとも「報告や説明はネット経由」で済ませるとともに、特段の必要性がない限り「コメントもネット経由」で行う形に変更した上で、専門家の招聘は「どうしてもリアルに集まる必然性や必要性が認められる」場合に限定するようにお願いしたい。

 

 オンライン化を訴える数々の投稿に誘発されて書き綴ってしまった。ともあれ、今回のピンチが「惰性で続いている非効率かつ非生産的な在り方を一掃」するチャンスになることをやまない。