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緊急事態宣言エリアに帰省先をもつ高校生の地方帰還

概要

 地方に所在する高校のうち、コロナウィルスの汚染が深刻なエリアから新入生や帰省中の在校生を迎える学校は、寮生活や学校生活が始まる前に「2週間の隔離」措置を講じていただきたい。

本稿を記述するにあたっての基本的な前提条件

① 自身は「都市部の中学生が地方の先進的な高校に“留学”する」のを積極的に応援する立場である。→ 地域みらい留学 応援メッセージ 参照

  

② 悪意をもって自身がウィルスに感染する者は誰一人としていない。むしろ、どんなに細心の注意を払っても、意に反して感染してしまう場合さえある。

 

③ 感染しても発症していない段階で、自分が他人に移す危険性を想定せざるをえない(→これを完全に否定する調査結果は出ていない)。

想定すべき事態

 地方帰還直前に感染し、無症状のまま寮生活や学校生活が始まり、数日後に37℃台の発熱や咳症状を発症。その後の 4日間を寮の個室で過ごし、症状が回復しないため、然るべき手順を踏んで PCR検査。陽性と判明すると、閉寮は不可避。

 

 そこに至る過程で、教室や寮における濃厚接触者をゼロにできる保証はない。となると「寮を閉め出された濃厚接触者」が現れる事態も起こりうる。

 

 仮に「帰省させる」とした場合、もはやこの段階で公共交通機関の利用は不可能なので、どんなに遠方でも、保護者が自家用車で迎えに行かざるをえない。帰省させたのが無感染者であったとしても、帰省先が危険性が高いエリアであったならば、再び地方に戻って来る時には、どのみち「2週間の隔離」を行わざるをえない。また、その体制を整備しない限り、該当者はいつまで経っても戻って来ることができない。

 

 学校は、このような生徒を放置して授業を再開~継続することもできる。その場合、最低限、出席者とは別個にオンライン対応が必要となり、労力が増える分、せっかくの教育レベルは落ちる。

 

 その後「この事態に際して危機管理が不十分であった」ことが(留学を検討している)中学生や保護者の知るところとなると、他によほどの魅力を備えている高校や地域でない限り、受験先の候補からは外れる。次年度以後、県外からの入学者は激減し、再び統廃合の危機に直面する。

 

 当然、汚点がついた状態からの再起は極めて厳しい。元々「地域が生き残るためには高校の存続が不可欠」だったはずなのに、その手立てを失い、地域の限界集落化が加速する。

最悪を想定して予防措置を講じる重要性

 参考までに、この1ヶ月あまりの間に自身が経験したことや感じたことを検証する。

 

 2月下旬の段階で、数名の学生を島根県益田市へ引率し、現地でフィールドワークを実施する予定を組んでいた。

 

 2月27日、安倍首相による臨時休校要請。島根県の県立高校は休校を見送り。

 

 3月4日 朝、「現地で小中高生との交流は厳禁」の指示。それは「リスクを抱えながらも継続に踏み切った島根県の学校を、本学が原因となって休校に追い込むリスクは、絶対にゼロにする必要があるから」という危機管理上の判断。

 

 3月4日 午前、フィールドワーク自体が中止に。それは、現地の市役所から「本日午前9時、下関市で山口県第1号の感染者が発生し、危機が身近に迫っている事態を認識し、受入れを止める」という連絡があったから。

 

 3月5日、大学生へ「帰省や旅行控えて」国立大協会長、異例の訴え

(引用)「・・「帰省や旅行(海外も含む)など居住地域を越えての移動は感染リスクが高まるのと同時に、全国に感染を広げることにつながりかねない」などとして、慎重に判断するよう求めた。」

 

 3月9日、大正大学、既に「3/16の卒業式は全面的な中止」と発表していたのに続き、「3/16は学生も保護者も一切入構禁止」と発表。(・・ 当時は「そこまで徹底する必要があるのか?」という気持ちも)

 

 以後に起こった典型的な事態が、

 

 3月21日、京都産業大学でクラスター発生

 

 ‥「本学が『入構禁止措置』を講じていなかったら」を想像してゾッとした。

 

地方で現に起こり始めていることと防止措置

 その後さらに状況は悪化し、現に「首都圏等からの転入者・帰省者が地元で発症」する事例が続出。緊急事態宣言に伴う学生の帰省による感染拡大も懸念されている。こうした情勢を受けて、既に「来県後2週間の自宅待機を要請」している自治体もある。

 

 3月23日、小池都知事が緊急記者会見

 3月24日、安倍首相が東京五輪の延期を表明

 

 4月2日、愛媛県、新居浜市への赴任者の感染判明 →「2週間の自宅待機等を要請」

 4月4日、秋田市「首都圏などからの入学・転入者に、来県後2週間の自宅待機を要請

 4月7日、「東京脱出」SNS拡散中 新たなクラスター生むおそれ

 

まとめ:大至急「2週間隔離」措置を!

 以上をふまえると「ウチの県、ウチの高校だけは、感染者が発生しない」と考え、上記のような事態を想定した体制を構築しないのは、あまりに楽観的すぎると言わざるをえない。

 

 最低限「緊急事態宣言エリアから入学する(戻ってくる)生徒の2週間隔離」をお願いしたい。具体的には「高校の近隣に適切な施設等を確保し、できるだけ小さい単位に分けて入居させ、健康観察を続ける」形だ。

 

 その上で「教育の公平性」に留意できるのであれば、「全員の到着後、2週間を経て、入学式や始業式を挙行」する形が望ましい。

 

 コロナ情勢の急変に伴い、始業日の緊急延期に踏み切った自治体もある。くれぐれも、意思決定を誤ったり、延ばしたりすることのないよう祈りたい。