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臨時休校中の「探究×キャリア教育×ふるさと教育」

はじめに

探究・ふるさと教育・キャリア教育等の充実しようと計画を立案し、新年度をスタートする予定だった高校は多い。

 

しかし、残念ながら、新コロナウィルスの感染拡大に伴って高校を臨時休校にする自治体が増える等、計画が大幅に狂ってしまった現場は多い。他方、学校が過度に干渉しない限り、生徒は時間を自由に使える状況にある。

 

大ピンチなのは確かである。半面、見方を変えれば絶好のチャンスだともいえる。いや、むしろ当初計画より中味のある教育活動を展開できる可能性さえある。

家庭学習に入る(入っている)生徒に成しうる指導

以下、厳密には、より丁寧なアプローチが必要ですが「ベストにこだわってタイミングを逃す」よりも「ベターをめざしてチャンスを活かす」ことを優先したいと思います。いくつかのパターンを提示しますので、適宜、切り取ったり、組み合わせたりして、ご活用ください。

 

① 新コロナウィルスに関するニュースを見て「おや?」「えっ?」と感じ、「知りたい!」「調べてみたい!」と思ったことはありますか? ‥思いつく限り書き出しなさい。

 

② ①のうち、最も重要だと思う『問い』を3つ選びなさい。

 

③ ②について、安全を確保できる範囲で、書籍・インターネット・インタビュー等によって調べ、まとめなさい。

 

④ 調べたり、まとめたりする過程で、感じたこと・思ったこと・考えたことがあれば、書き出しなさい。

ーー

 

⑤ 新コロナウィルスの感染拡大によって、あなたの家族など、身近な人の仕事や生活にどのような変化が起こりましたか?

 

⑥(⑤を換言して)新コロナウィルスの感染が「拡大した後に成り立たなくなった地域の仕組み」から「拡大する前には普通に成り立っていた地域の仕組み」を再現しなさい。

 

⑦ ⑤の変化 と テレビやインターネット等で報じられているニュース とは、どのようにつながっていますか?

 

⑧ あなたの家族など、身近な人は、新コロナ問題に対して、どんな想いで立ち向かい、どんな形で貢献していますか?

 

⑨ ⑧の貢献は、どんな学問や専門技能とつながっていますか?

 

⑩ あなたが大人だったら、新コロナ問題に対して、どんな立場で、どのように貢献していきますか?

 

⑪ 今の自分(高校生)でもできること、今の自分だから(家庭や高校や暮らしのなか、ネットを介してでも)できること、探究して見えてきたからこそ、自分や誰かを守るために行動・貢献したくなることは何ですか?

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【補足】

 

・①~④の中には「探究」が含まれています。自分の内側から湧き起こった「問い」を起点に学びを進めるのが「探究」であり「主体的な学び」です。このツボを掴めれば、各教科の授業にも反映できます。

 

・①~②の間に生徒間で情報を交流できるとベターです。

 

・⑤は、身近な人が置かれた立場によっては、インタビュー等をできる状況にない場合も多いと考えられます。そのような生徒の調査先を学校等で用意できるとベターかと思います。

 

・⑤や⑥を生徒間で交流できると、地域における「人と人のつながり」が浮かび上がり、「地域とは何か?‥どんな機能をもっているか?」について理解が深まります。「地域理解」が進む等、「ふるさと教育」として成立する訳です。

 

・⑧は「育成をめざす資質・能力」の3本柱のうち「③どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力・人間性等)」につながっています。

 

・⑨は「社会」「学び」「自分」がどのようにつながっているかを探らせるものです。

 

・⑧~⑩は「キャリア教育」とつながっています。

 

・⑧は、可能であれば、「もともと関係性が深い相手」よりも「お互い冷静になれる関係性の相手」にインタビューする方が効果的かもしれません。また、あくまでも「双方に時間的・精神的な余裕があれば」ですが、「聞き書き」の手法を活用するとよいかもしれません。「思考力・判断力・表現力」が自然に高まります。

 

【参考】森の名手・名人  聞き書き甲子園  森林のたより掲載一覧表

    (公益社団法人 岐阜県緑化推進委員会)

    ※ ウチの愚息が書いたものもあります。

 

・⑪は 岩本悠さんのご意見を反映させていただきました。

おわりに

①~⑩は、生徒に課す前に「先生方でやってみる」ことをお奨めします。すると、これまで文部科学省や教育委員会から降りてきた諸々に対して「こういう意味だったのか!」とリアリティを感じることができます。

 

ともかく、これまで「忙しすぎて、高校教育改革に対応する時間なんかない!」と言っていた時間に恵まれたのです。ですので、臨時休校を教職員研修の機会としても最大限に活用してほしいと思います。

 

活かしたか否かで、生徒以上に、先生方や学校の未来が大きく変わることでしょう。

 

新年度をスタートできていない高校、始業式や入学式だけ実施した後に再び休校に入った高校、これから再休校に入る高校、色々あるとは思います。しかし、多くは「5月6日まで」を活用できるはず。ぜひ、検討をお願いします。