· 

教科横断的な学びは「生徒自身の深い問い」から

 「地域」「探究」「カリキュラムマネジメント」‥これらを有機化するのは難しく、実は私自身、これまで名案を持ちえていなかったのですが、昨夜の会(第3回SCHシンポジウム西日本 #2)で発表した、宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校の生徒が明快に教えてくれました。曰く、

 

「地元では『伝統文化は残すもの』という感じがしていたが、フィリピンを訪問した時、『伝統文化は生活の中にあるもの』という印象をもった。こうして『伝統とは何か?』という問いを持つに至った」

 

‥自分の内側から湧き起こってきた『伝統とは何か?』という問い。この問いを持ち続けていれば、各科目の授業中も、図書館に入った時も、ニュースを視ている時も、飛び込んでくる情報は、この問いを持つ前と比べて全く違ってくることは容易に想像できます。

 

つまり、「総合的な探究の時間」を「根源的な問い」が生まれる時間にすることで、各生徒が「自分に固有の問い」を核として「地域」の諸事象や「各科目」の内容を自力で有機化していける訳です。対比すると以下のとおりです。

 

・総探で「教師が設定したテーマ」を軸に「教師が」各科目の内容を有機化

  ↓

・総探で「各生徒の内側から湧き起こった問い」を軸に「各生徒が」各科目の内容を有機化

 

また、各教科担任は「誰がどんな問いを持っているのか?」を知っていれば、授業で扱う素材も変わってくるでしょうし、個別の助言も可能になります。‥各生徒は問いに当事者性を持っているので、無理のない範囲の伴走により、各科目の内容を(大学レベルの内容であっても)自力で学び進めていけます。

 

こうした生徒が現れるのは、間違いなく、五ヶ瀬中等教育学校が長年にわたって探究を大切にしてきた発露。先生方のご努力がなければ、今回の学びはありませんでした。深く敬意を表したいと思います。